第159章 地下室
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何も無い広大な空間の中―――――、超大型巨人の顔だけが、僕の前にあった。
その目はひどく悲しそうで―――――……僕に何かを、言いたかったのかもしれない。
目を開けると、風が吹きすさぶ――――――壁上だった。
「痛い……うぅ……痛いよぉ……。」
小さなうめき声に気がつき、上体を起こして隣を見ると―――――、怪我だらけのサシャが、うなされている。
「サシャ?!……酷い怪我だ……!!なんでこんな……!!」
状況が飲み込めないまま、近づいて来る足音の方を振り返ると、エレンが驚いた顔で駆けよって来て――――、僕を思い切り、抱き締めた。
「よく……戻って来た。」
「え?」
どういうことだ?混乱していると、兵長が壁の下から上がってきた。僕が現状ここに至るまでの記憶がないことを伝えると、兵長は信煙弾でみんなを呼び戻して、エレンにいきさつを話すように命じた。
その話を聞いて―――――僕は耳を疑った。
そう、段々思い出して来た……僕は確かにあの時……ベルトルトの発する熱風に焼かれて――――死んだと思った。でも、こうして何事も無かったように生きてるのは―――――……。
「―――――僕が巨人になって……ベルトルトを食った……。」
湧き上がる吐き気は何によるものだろう。
元とはいえ、仲間を食ったこと?エルヴィン団長の代わりに生かされたその重責によるもの?いや、その――――どちらもだ。
なんとか逆流しそうな胃液を水を飲んで流し込む。
ただただ疑問だ。
なぜ?僕はそれを口に出していた。