第159章 地下室
俺が壁上に戻ると、まるで幽霊でも見たかのように、そこにいたエレンが目を見開いた。
「――――サッシュ分隊長!!!生きてたんですね!!!」
「ああ……なんとかな。エレン………硬質化でうまく穴を塞いだじゃねぇか……よく、やったな。」
「――――っはい……!」
俺達の会話を聞きつけてか、会いたかったその人が壁上に戻って来てくれた。
――――つーか……あんだけ戦って、なんで普通の顔で過ごしてんだよ……。
「――――兵長……。」
「――――サッシュ……。」
相変わらずの不愛想な顔だが、兵長が僅かに目を開いた。
俺が生きていたことが意外だったのか?
まああんたに比べりゃ俺なんてまだまだだけど……それでも頑張ったんだぞ?ちょっとくらい褒めてくれても―――――。
そう思ってはぁ、とため息をつくと、兵長はつかつかと足早に俺の方へ来て―――――膝をついて目の高さを合わせて、俺を見た。
「――――よく戻った。」
その手が力強く、俺の背をどん、と叩く。
――――まったく不器用だな……でもわかるんだ、俺には。
あんたが膝をついて目を合わせてくれるのは―――――、労いと、寄り添いと、敬意だろ?
リンファを失って俺が泣き崩れた時もそうだった。
俺はまたみっともなく、少し―――――泣いた。
「――――はいっ………!」
兵長の手が俺の頭をがし、と乱暴に撫でて立ち上がると―――――またその自由の翼を翻して壁下へ消えた。