第159章 地下室
俯いたハンジは、眼鏡を外して――――……片手で顔を覆った。こいつが心を削がれているのは、あいつを失ったことも大きいのだろう。
「――――モブリットは……見届けたのか?」
「………ああ……。超大型巨人出現の大爆発から――――……私を守って………。」
「――――そうか。」
あの爆発に巻き込まれた奴らは―――――きっと跡形も残ってない。またハンジの手から、大事な仲間の命が零れていく。
もう何度、こいつはこうやって――――……心を裂かれるような苦しみから立ち上がって前を向き続けてきたのか。
「――――俺も随分体力も戻った。捜索してくる。――――リフトも、見て来てやる。」
ハンジの横をすれ違うその瞬間に、頭をわしわしと掴んで撫でる。
「――――ナナは泣くだろうな。だが……失った悲しみだけじゃない。――――きっと……お前やエレン……ここにいる奴らが生きて還ってきたことへの、嬉し泣きだ。」
ハンジは目を丸くして俺を見上げた。そして泣き出しそうな顔で―――――笑った。
「――――謙遜するねぇ。ナナを一番泣かせるのは、いつだってリヴァイ、あなたじゃないか。」
「――――どうだかな。」
ハンジは空を仰いで目を閉じて―――――、何かの儀式のように、その心の内を整理するように、大きく深呼吸をした。
再びかけたその眼鏡の奥の目に、いつもの光が宿っているのを見て―――――、俺は壁を降りた。