第14章 疎通 ※
「………くそ……。」
窓側のベッドのシーツをはぎ取ると、脱ぎ終わったナナを後ろからくるんで抱き上げた。
「ひゃっ……」
窓から遠いほうのベッドへナナを降ろす。状況を飲み込めないというナナを、その身体にまとうシーツもろとも腕に閉じ込めて言う。
「………寒い。体温貸せ。」
ナナはシーツに顔を埋めたまま頷いた。
そのまま俺は、今回の壁外調査で見てきた事実を話し、ただ静かに、ナナはその話を聞いていた。
「………やはり、お前を外へは連れて行けねぇ。」
「…………いくらリヴァイ兵士長でも、そればかりは聞けません。いつか必ず、医療班として私も外に出たいです。アルルの………ためにも。」
すぐに返ってくるその返事。
友人が死んでも変わることはなかったことからも、その意志の強さはよくわかった。
だが俺はアルルの最期を見届けたあの一瞬、想像してしまった。
あそこにいるのが、ナナだったら、と。
あの時俺はアルルまでの距離を見て、一瞬で救えないと切り捨て、多少でも生存の可能性のあるエルドとニナに眼を向けた。あの時の判断が間違っていたとは思わねぇし、後悔もしてねぇ。だからこそ、エルドを救えた。
もしあの時のアルルがナナだったら。エルドが、エルヴィンだったら?俺はエルヴィンを守るために動くべきだ。
兵としてのナナの代わりはいても、頭としてあれほどの才を持つ者はエルヴィン以外にそういない。
その『兵士長としての判断』が、できただろうか。