第14章 疎通 ※
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『ただいま』
その言葉を言ったのは、何年ぶりだろうか。
言いなれない言葉が妙に気恥しく、俺は顔を見られないようにナナの身体をそっと抱きしめた。
「………我慢しないで、泣け。悲しむことで、傷はいつか癒えるんだろう?」
俺の言葉に、ナナは少し驚いたように俺を見上げ、胸にすがりついて泣いた。
やがてナナが少し顔をあげ、真っ赤な鼻をして言った。
「リヴァイ……兵士長、もし、良ければ………壁外調査のこと……アルルの…………最後も……詳しく聞かせていただけませんか………。」
「ああ。……だがそのまえに、着替えだ。」
「あっ、でもっ……着替え持っていなくてっ………!」
戸惑うナナの濡れたブラウスを脱がしていく。濡れた生地が肌に貼りつき、冷え切っている。このままでは体温を奪われる一方だ。
「当たり前だ。こんな天候でなきゃ、帰れてた距離だからな。……だが仕方ない。濡れたものは脱いで、これにくるまれ。………下も、脱がされてぇのか?」
「じ、自分でやりますっ………!あ、あっち向いててください……っ!」
「………。」
俺はナナから目線を外し窓の方を見ると、そのナナの様子がくっきりと窓に反射している。
肌に貼りついた服を脱ぐと、しなやかな身体のラインが露わになる。