第158章 ウォール・マリア最終奪還作戦⑤
「邪魔するなよおぉぉぉ!!!」
「よせ!!」
フロックがミカサに掴みかかろうとして――――、ミカサが怯んだ一瞬をついて、背後からハンジがミカサを拘束した。
「何って……ことだ………。」
ハンジがミカサを押さえつけている間に、エルヴィンに注射を打つ。
「うわぁぁあああああああ!!!」
「ミカサ!!私達にはまだエルヴィンが必要なんだ!!!調査兵団はほぼ壊滅状態!!団長まで死んだとなれば……人類は象徴を失う!!あの壁の中で希望の灯火を絶やしてはならないんだよ!!」
「それはアルミンにだって……できる。」
「確かにアルミンは逸材だ……だが我々の戦いはこれからもずっと続くんだ!!まだエルヴィンの経験と統率力が必要なんだよ……!」
ハンジもまた、涙を堪えるように遠い目をした。
「私にも生き返らせたい人がいる……何百人も……。調査兵団に入った時から、別れの日々だ。――――辛い。辛いよ。わかってる。でも……それでも……前に進まなきゃいけない……。」
ミカサが涙を流しながら、ハンジの言葉に耳を傾けた。
――――それでも諦めていないのは、エレンだ。
俺の脚をまだ掴んで、訴える。
「……兵長……アルミンには……夢があるんです……。この壁の向こうにある海を……いつか見に行こうって……。ガキの頃の夢を……俺はとっくに忘れて……母さんの仇とか、巨人を殺すこととか……憎むことしか頭に無くて……。でもアルミンは、夢を見てる!!」
――――知ってる。
前祝の日の夜、こいつらが夢を語っていたのを――――俺はナナと共に聞いていた。
だがそれはエルヴィンとナナも同じだ。
2人……共に手をとり合って、海を越えた更に外の世界を夢見てる。
――――だからこそ、俺はエルヴィンを諦められない。
――――ナナの夢を叶え、ナナと共に生きるに相応しいこの男を、今ここで―――――死なせるわけにはいかない。