第158章 ウォール・マリア最終奪還作戦⑤
「人類を救うのは俺でも団長でもない!!アルミンだ!!!」
エレンの叫びを予想外に否定したのは、フロックだった。
「――――違う!!人類を救うのは、エルヴィン団長だ!!」
「――――フロックは黙ってて……!」
ミカサの牽制にも怯まず、確固たる何かを持ってフロックが食ってかかる。
「黙ってられるかよ……!お前らばっかりが辛いと思うなよ……。あの壁の向こうで……何が起きたか知ってるか?獣の巨人に……みんな殺されたんだ。遠くから飛んでくる石つぶてに、みんな……グチャグチャにされた。誰も助からないと思った……でも……エルヴィン団長だけは違った……。あの状況で獣の喉笛に食らいつく算段を立て……実行した。」
フロックの手が、体が震えている。
――――思い出すのも憚られるほどの地獄絵図だった。
そりゃあ……震えもするだろう。
――――悪かったな、すまなかったなと……そんな言葉では詫びきれねぇ。
俺は……結局獣を逃がしたんだ。
「俺達新兵の命を囮にしてな。全てはリヴァイ兵長が獣を奇襲するためだった。――――みんなバラバラになって死んだよ。息のあるエルヴィン団長を見つけた時……俺は……殺そうと思った。」
「――――………。」
「でも……それじゃ生ぬるいだろう…?!この人にはもっともっと……もっと!!地獄を見て貰わないと……!そしてわかったんだ……巨人を滅ぼすことができるのは、悪魔だ!!悪魔を再び蘇らせる……それが俺の使命だったんだ!!それが……おめおめと生き残っちまった……俺の生きてる意味なんだよ!!」
――――何度も見て来た。
エルヴィンを悪魔と罵り、死ぬより辛い目に遭えばいいと呪うようにして死んで行った者達も。
――――その恨みつらみを背負わせて……俺は……またエルヴィンに、悪魔になれと言うのか……?
だが……エルヴィンをナナの元に――――……帰してやらねぇと……あいつが――――……泣く………。
――――何が正しい。
俺は、何を選べばいい……?