第158章 ウォール・マリア最終奪還作戦⑤
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シガンシナ区内に駆けつけると、アルミンが瀕死の重傷だった。そして超大型のベルトルトを引きずり出すことに成功していた。
「兵長!!注射を早く!!!アルミンを巨人にして、ベルトルトを食わせるんですよ!!!」
注射器を探す手が鈍る。
―――――アルミンに使ってしまったら……可能性はなくなる。
――――エルヴィンを生き返らせられる可能性が。
わかってる。
あの投石を被弾して、生きていられるはずがない。
なによりこれから壁の向こうへ行って安否を確認しない限り、エルヴィンの生死がわからねぇ。奴らがまた仕掛けて来ないという保証もない今……瀕死のアルミンを巨人化させてベルトルトを食わせてしまうのは、恐らく正しい判断なのだろう。
――――だが俺はエルヴィンを諦めきれないのか………。
――――初めてだった。
ナナ以外のことで、兵士長としての判断に私情が絡んできたのは。
「兵長!!早く注射器を下さい!!」
「……ああ……。」
注射器を懐から取り出して―――――エレンの手に渡そうとした、その時。
「リヴァイ……兵長……やっと追いついた……!」
姿を現したのは、編入してきた―――――フロックだった。
その背に、俺が諦めきれなかったエルヴィンを――――背負っている。
―――――まさか。
「エルヴィン団長が重傷です。腹が抉れて……内臓まで損傷しているため……血が止まりません……。例の注射が役に立てばと思ったのですが、どうでしょうか?」
フロックはそう言うと、背負っていたエルヴィンを俺の前に降ろして寝かせた。口元に手をやると……確かに微弱ながら、息をしている。
「………まだ息がある。まだ………生きてる。」
「――――兵長……?」
「―――――この注射は、エルヴィンに打つ。」
その決断に抗議するように、エレンが俺に詰め寄る。