第14章 疎通 ※
宿につくと、リヴァイ兵士長は手際よく濡れた兵服を脱ぎ、干し始めた。
私はぼんやりと入り口に立ったまま、手の中にある血まみれのアルルのエンブレムを見つめていた。
結っていなかった長い髪から、ぽたぽたと滴が落ち、床板に模様をつけていく。
「おい、さっさと服を乾かせ。風邪引いても知らねぇぞ。」
リヴァイ兵士長は、少し苛立ったように大きなバスタオルを私の頭にかけ、ガシガシと頭を拭いた。
「………それ、渡さなかったんだな。」
「………はい………この血の重さが………あまりに残酷だと思ったので………。」
リヴァイ兵士長はバスタオルをとると、私の兵服のジャケットを無理矢理脱がした。
「あっ……?!」
続いてシャツのボタンを外そうとするので、慌てて制止した。
「あっあの………自分で………できますから………っ!」
指が重なったその時、その温かさにホッとした。アルルのあの細く小さな手には、もう二度と触れられない。
私はまたも涙をこらえながら、リヴァイ兵士長の手をギュッと握り、ずっと言いたかったその言葉を伝えた。
「………おかえりなさい………!」
「ああ、ただいま。」
「よく………ご無事で………っ………!」
リヴァイ兵士長は優しく、ふわりと私を抱きしめてくれた。