第157章 ウォール・マリア最終奪還作戦④
「やっぱり!!骨は消費しないんだ!!肉に刺さなければアンカーは抜けない!!そして何より!!熱風を放っている間は筋肉を動かせない!!」
――――熱い、と感じた熱風は――――……やがて痛い、という感覚に変わる。
そしてその高温から、兵服が発火した。
ぼぉっと燃え広がる炎が、僕の自由の翼を―――――焼いていく。
「息……が……、これ以上は……もう……!」
痛い、苦しい、熱い、痛い、肺が―――――焼ける。
アンカーを離して今ここから逃げれば、命は、助かる……かもしれない。
「――――いや、まだだ!!この程度じゃ足りない!もっと時間を稼ぐんだ!!」
――――思ったより僕が粘るからか。
ベルトルトは更に熱風を強めた。
――――いいぞ、強く熱風を発すれば発するほど、君の筋肉は消費されて――――……エレンに簡単に、削がれるだろう。
「ッ!!」
ゴォッと音を立てて放たれたそれは―――――もはや熱風ではない、地獄の業火。その言葉が頭に浮かんだ。
兵服に燃え広がる炎が僕の肌をちりちりと焦がしていた、それを全て上から焼き尽くすような――――、業火。
自分が焼ける匂いと――――……痛みと形容することも出来ない程の気が狂いそうな苦痛。
でも。
まだ、離すな。
僕が見て来た、何かを変えられる人たちは―――――何かを……大事なものを、捨てられる人たちだった。
エレンに託すんだ。
僕の命も夢も――――――すべて。
僕が……捨てられるものなんて、これしか無いんだ。
きっと―――――エレンなら、海に……辿り着く。
海を――――見てくれる。
『今出来る事を、あなたにしか出来ない事を考えなさい』
―――――僕はやれたかなぁ、ねぇ、ナナさん。
信じてくれた君に、僕は応えられた?
―――――ねぇ、エレン。