第157章 ウォール・マリア最終奪還作戦④
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――――――不思議だな。
もっと怖くて、体の震えが止まらないかと思ったけど。
震えなんて全くなかった。
そうだ、僕はエレンとなら………いつだって、なんだってできる勇気が沸いて来る。
――――やっぱり君は、人類の……僕の……希望の光だ。
壁上で身体を起こした巨人体のエレンの肩に乗る。
「自分で考えた作戦だけど……成功するかどうかは……僕がどれだけ耐えられるかで殆ど決まるなぁ。」
僕の声に反応して、エレンはちらりと目を僕に向けた。
巨人のその目は鋭くて怖いはずなのに、全然怖くないのは………その目がエレンのそれだからだ。
ずっとずっと側で、いつも見てきた。
僕の勇敢で危なっかしい……親友の目。
「エレン……悪いけど僕は、海を見るまでは死ねない。だから大事に至らないところで切り上げるけど……あとは任せたよ?ほ、ほら……僕ってそんな………勇敢じゃないから……。」
――――そうだよ、エレンにいらない心配はかけない。
「エレン……わかってるよね?一緒に海に逝くって約束しただろ。僕がエレンにウソついたことあった?」
―――――エレンに伝わったかな、僕の覚悟は。
「――――だから何があっても、僕の作戦守ってくれよ?!」
エレンの肩から壁上に降り立つ。
目の前に迫り来るベルトルトと対峙したその瞬間、エレンが体勢を崩して―――――……いや、崩したように、見せかけて……壁の下へと、落ちた。
――――いいぞエレン、君ならできる。
その硬質化の能力を……見事に使いこなした君なら。
ベルトルトは落ちたエレンを一瞥して、もう戦えないと判断したのだろう。
僕に狙いを定めて―――――、その長い腕を振り抜いた。
なんとかそれを避けて、立体機動でベルトルトに近付く。
――――アンカーを刺すのは、筋肉ではダメだ。
熱風を生み出すときに筋肉を消費して、アンカーは抜けて吹き飛ばされてしまう。
狙うのは―――――
「そこ、だろ……?!」
ベルトルトが食いしばる歯に、アンカーを刺した。