第157章 ウォール・マリア最終奪還作戦④
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「―――――地獄絵図だ……。」
サッシュ分隊長から待機命令を受けて、一緒に壁上で待つバリスさんが呟いた。
「――――全滅……?」
絶望的な一言を俺も零した。
――――だってそうだろ?
シガンシナ区の方にはまだあの超大型が突っ立っていて……ここからじゃ街の様子は見えないが、しきりに火を点けた家屋をばらまいていることだけはわかる。
あんな惨状の中、いくら精鋭揃いの調査兵団だとしても何ができる?
ウォール・マリア内に目を向けると、獣の巨人が砲撃――――いや、投石によって街を粉々にしていることが遠目からでもわかる。
あれだけ壁から距離をとられて、飛び道具で一掃されたら……たかが人間に成す術などないだろ。
「――――全滅などするわけがない!!あそこには……!前線には……っ……エルヴィン団長とリヴァイ兵士長がいるんだぞ?!」
バリスさんが俺の言葉を強く打ち消した。
「――――そんな楽観視、よくできますね……。」
どれだけ僅かな希望に縋るんだ。
希望に縋ればその希望が断たれた時に苦しいのに。
だから俺は覚悟もしてる。
―――――兄ちゃんが、もう………戻って来ないかもしれないって………。
「――――楽観視じゃない。ただ、信じてる人がいる。」
「――――信じてる人……?」
バリスさんは獣の巨人のいる方向をじっと見つめたまま、拳をぎゅっと握り締めた。