第157章 ウォール・マリア最終奪還作戦④
クソうるせぇ雄叫びを上げながら、俺を捻りつぶそうと腕を伸ばす。
――――無駄に長ぇ腕が命取りだったな。
―――――遅い。
俺はアンカーを回収して全身の筋肉を最大限に駆使して体勢を整える。そうすれば、最小限のガスで滞空時間を伸ばせる。
逆手に持った刃で、奴の汚ねぇ指も腕も――――――バラバラに切り刻んだ。
斬撃の方向に無駄なく力を乗せれば、刃を痛めることなく連撃が出来る。
そのまま獣の背後に回り込む。
奴は、咄嗟にもう片方の手で項を庇った。
――――なるほどこいつは、鎧や女型ほど硬質化が得意じゃねぇのか。
――――だが、俺が狙うのはそこじゃねぇよ。
項へ斬り込むと見せかけてアンカーを放つが、方向を転換してまたすぐアンカーを回収する。項から―――――その視界を奪うために、目に標的を変えて斬り込んだ。
そしてすぐさまガスを大きくふかして移動角度を変える。地面に向かって直下し―――――今度は、その足首の腱を両方、ぶった斬った。
このスピードを維持したままの方向転換を、よくオルオとペトラが―――――うぜぇくらいに教えを乞いに来ていた。
サッシュも、リンファも。
だが――――ミケやエルヴィンですら、これは出来なかった。
出来るとしたら恐らく―――――、同じアッカーマンの血と肉体を持った、ミカサだけだろう。
常人離れした筋力と、空間認識能力が無ければできないらしい。
あっけなく獣は地面にドォン!!と大きな音を立てて伏した。
「さっきは随分と……楽しそうだったな。」
――――このまま項を切り裂いて―――――……引きずり出してやる。
「もっと楽しんでくれよ。」