第156章 ウォール・マリア最終奪還作戦③
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―――――呼んだ?私を。
「―――――エルヴィン………?」
毛布にくるまって膝を抱えていた私は、聞いた。
確かに。
エルヴィンが私を呼ぶ―――――優しい声を。
毛布を剥ぎ取って立ち上がり、南の空を見つめる。
こんな早くに戻ってくるはずはない。
それに、物理的距離がありすぎる。
―――――聞こえるはず、ないんだけど。
「―――――本当に、聞こえるんだね。」
私はふふ、と込み上げる喜びの笑みを抑えられなかった。
だってそうでしょう?
エルヴィンが私の声が聞こえると言ってた。
エルヴィンだけが私の声を遠くでも聞こえるなんてずるい。私だって離れてても、あなたの声が聞きたい。
――――やっと聞けた。
どうしたの?真実を見つけた?
辿り着いたよって、教えてくれた?
――――ううん、例えそうじゃなくてもいいの。
作戦がもし失敗していて――――……地下室に行けていなくたっていい。
何度だって挑めばいいから。
その時は病気を治して、一緒に行きたい。
「―――――だからただ、無事に帰って来て………。」
なんで涙が流れるんだろう。
――――いやだ、そんな悪い想像はしない。したくない。
きっとさっきの声は――――、そう、真実を見つけたのか……もしくはエルヴィンのことだもん。
こんな時でも甘い言葉を贈ってくれたのかもしれない。
待ってる私が寂しくないように。