第156章 ウォール・マリア最終奪還作戦③
頭の中で、ナナが『おいで』と大きく腕を広げて笑う。
かと思えば、唇を尖らせて目を逸らす。
大きく口を開けて笑って――――、
涙を浮かべた抗議する目を向ける。
頬を染めて目を見開いた次には、
顔を火照らしてふにゃ、と酔っぱらった顔で歌を歌って――――、
真白な肌を赤く染めて快感に喘ぐ。
馬もろとも崩れ落ちる、命が尽きるその瞬間でさえ―――――……俺の中に思い起こされるその走馬燈は、君で埋め尽くされている。
――――こんなに幸せなことはない。
あぁ、怒るなよ。
ハンジ、ミケ。リヴァイ。
そして――――……俺が死なせてきたみんな。
父さん、母さん…………。
ちゃんといるよ、俺の中に―――――みんな。
恨み言ならあの世でちゃんと聞こう。
……そう、ナナのおかげで……俺はあの世で父さんに会うことも、怖くない。
――――父さん、そっちで話すよ。
俺のナナが齎してくれた、真実に近づくための沢山のヒントを。そして――――そっちで一緒に見届けよう。俺の仲間が、きっと真実に辿り着くから。
遠のく意識の中で、兵士たちの声が聞こえる。
「―――っ団長が………!!」
「振り返るな!!!!進め!!!!!」
―――――そうだ、振り返るな。
進まなければ、勝てるはずがないのだから。
――――俺はここで終わりだが―――――……この心臓と意志は、生者に継いでいく。
だから魂は、彼女の元へ。
「――――――――ナナ、愛、して――――………。」
どうかナナに俺の死が――――……
せめて優しく、届きますように―――――………