第156章 ウォール・マリア最終奪還作戦③
まもなく更地と化しそうな、人々が暮らしていた元街の廃墟を駆け抜け、飛来する石つぶてを避ける手立てなど何もないない平地に出た。
獣の巨人が我々に気付き、手元に持っていた大岩を砕いて―――――、振りかぶる構えを見せる。
――――来る。
「―――――ひっ……!いや、いやだぁあああああああっっ!!!」
私の後ろから、恐怖に錯乱する兵士の断末魔が聞こえる。
――――悪いな。
それも全て、私が地獄まで持って行こう。
その声を掻き消すように、他の兵に恐怖と戦慄を伝染させないように、一際大きな声で彼らを鼓舞する。
「兵士よ怒れ!!!!!兵士よ叫べ!!!!!兵士よ!!!!戦え!!!!!!」
微々たる抵抗として信煙弾を放つも、まるで意に介さず獣の巨人はその無駄に長い腕を振り抜いた。
飛来してくるそれは、人の動体視力では追いきれないほどの速さだった。
――――ただ、猛烈な風が吹いた、みたいだった。
最初に撃ち抜かれたのは――――私の横で果敢に声を上げていた……駐屯兵団から編入してきた兵士だ。
私は目の端で、彼の体から頭と腕が離れて吹き飛んだのを見た。
――――次の瞬間、それはまるでその一瞬を切り取ったように見えた。
そう、ナナが言った――――、見たままを切り取れたらいいのに、というあれだ。
ああ……人の脳内ではこんな風に、一瞬を永遠のように切り取ることすらできるのかと思った。
私の見た永遠に近いような“一瞬”は、私の馬の脳天から首を吹き飛ばした石つぶてが―――――そのまま自身の左脇腹に、めり込む瞬間。
至近距離から大砲で打ち抜かれたように、腹の大部分が、持って行かれた。
「―――――――ッ……ナナ…………。」