第156章 ウォール・マリア最終奪還作戦③
―――――――――――――――――――
―――――全員が騎乗した。
これから死にゆくために。
最期になるであろう奴らの顔を……見渡す。
忘れねぇ、絶対に。
お前らが捧げた心臓は――――、然るべき結果につなげてみせよう。
どれだけ時間がかかったとしても。
エルヴィンは想像よりもずっと落ち着き払った顔をしてやがった。最期になるであろう会話は――――やはり、ナナのことだ。
「――――エルヴィン。何かナナに伝えることはねぇのか。」
俺の言葉に、ふっと笑って――――エルヴィンは俺に挑戦的な目を向けた。
「――――ない。ナナには俺の全てを、遺してきた。」
「……そうかよ。」
――――エルヴィンを失ったナナは……病気のこともある。本当に――――……後を追いかねない。
あいつが生きて行けるように言葉をかけてやれねぇのかと言いかけて、やめた。
こいつのことだ。
もう何か策は打ってあるんだろう。
「――――じゃあ、行くか。」
「ああ。」
エルヴィンは自由の翼を配したマントを翻して――――死に向かう兵士たちの戦闘に立った。
――――俺は初めて、その背に―――――
心臓を捧げる敬礼をした。
「――――行くぞ!!私に続け!!!!突撃!!!!」
人類の怒りを模したような蹄の音と―――――死を覚悟した兵士の雄叫びが轟く。
砂埃が舞ったその隙に――――俺とサッシュは東西に分かれて壁際を移動する。
絶対に獣の巨人は俺が殺す。
誓ったんだ。
エルヴィンに。
そして……恐怖でおかしくなりそうな精神を抑え込んで、震える手で手綱をなんとか握りつつ特攻していったあいつら、仲間のために。
「――――すまない………。」
――――守ってやれなくてすまない。
守ってやりたかった。
俺に力があるなら、手の届く命全てを守ってやりたかった。
だが――――この残酷な世界はそんなに甘くはないらしい。