第156章 ウォール・マリア最終奪還作戦③
エレンの実験でも、その能力には限度があることが明白だった。超大型はエレンの約4倍の大きさ。もっと燃料効率が悪くて当然だ。
そして熱風を出している間は動けない。
……熱風を出した後は細くなっている。
それはつまり、熱風は筋肉を消費して生み出しているということだ。
「なんだ、結局どういうことだよアルミン……。」
「作戦がある。みんなで鎧を引きつけてくれ!!超大型は僕とエレンで倒す!!」
――――未来を信じて、自らを奮い立たせる。
あぁ、分かった気がする。
ナナさんがあの日、戦えもしない身で――――、巨人の前に立ちはだかることができた理由が。
――――その先に、生きた未来に、夢を抱いているからだ。
「――――エレンと僕で、勝ってみせるから。」
僕の言葉に、ミカサもジャンも……頷いてくれた。
「―――分かった。鎧は私たちに任せて。」
「―――遅ぇよバカ……。本当にもうダメかと思ったぞ……。」
エレンを起こしにいく。
僕たちなら、きっとできる。
今までもこうして何度も―――――一緒に窮地を潜り抜けてきた。――――でも、今回は相応のものを差し出さなきゃ、どうやら勝たせてもらえそうにない。
壁上で気を失っている巨人体のエレンのところに駆けつけ、中にいるエレンを避けるようにして、刃を刺す。
トロスト区防衛線で自我を失ったエレンにも、こうして声を届けた。
「――――この作戦が上手く行けば、僕はもう――――海を見には、行けないな……。でも。僕はなぜか……外の世界のことを考えると、勇気が沸いてくるんだ。」
――――陽動作戦。
ただ単純な揺動ではベルトルトも乗って来ないだろう。囮は二つ。巨人のエレンと―――――僕。
その二つで気をとられている間に、エレンが背後からベルトルトを狙う。
そういう作戦だ。
「エレン!!起きろ!!海を見に行くよ!!」
――――僕の夢の一歩。海。その向こうにあるはずなんだ。
砂の雪原や炎の水や氷の大地。
エレンにそれを伝えると、エレンは僕の声に応えて、むくりと身体を起こした。