第156章 ウォール・マリア最終奪還作戦③
「俺は戻るぞ。」
「はい。」
「――――あいつらは、殺しても死なねぇよ。きっと還ってくる。」
去り際にナイル師団長が言ったその言葉に、また勇気をもらう。
「………はい!」
ナイル師団長が壁を降りて―――――、私は夜通し彼らを想い、祈り続けた。
東の空が白んで、太陽が昇り始める。
シガンシナ区に辿り着いただろうか。
エレン、穴を塞ぐ硬質化は成功した?
――――お願い、誰も死なないで。
巨人が目覚める時間帯になって、彼らとライナーやベルトルトとの戦いが始まるその時が近づくにつれ、体が小刻みに震える。
私はそれを寒さのせいにして、ナイル師団長がかけてくれた毛布にぎゅ、と包まった。
そしてその温かさの中で―――――胸元の片翼を……そしてずいぶんくたくたになったクラバットを―――――両手で大事に握り締める。
「――――どうか、どうか無事で……。」
――――外の世界への夢。真実に辿り着きたい。
そう、それは変わってないの。
でも……でも、あなた達を失うくらいなら……真実など置き去りにしたっていい。
うやむやなままでもいい。
――――それが、私の本音。
真実を追い求めることが私たちの生きる意味だから………決して、決して口には出さないけれど。
でも……私は、夢より、真実より、何より大切なものを見つけてしまった。
――――それが、あなた達だから。
どの道今死闘を避けたところで、いずれライナーやベルトルト、外の世界からの侵攻はまたやってくる。だから今ここで決着をつけることがいかに大事か、わかってる。
けれどどうしても、今この一瞬をあなた達と生きていたいという気持ちが拭えない。
戦いたくない。
死んで欲しくない。
「――――こんな気持ちで、一緒に行って……いいわけがなかったんだ。同じ志を抱けない私は……足手まといにしか、ならない……。」
ただひたすらに、祈り、歌う。
――――今の私には、それしかできない。