第155章 ウォール・マリア最終奪還作戦②
「……俺達は……今から、死ぬんですか?」
「そうだ。」
「……どうせ死ぬなら……最後に戦って死ねということですか?」
「そうだ。」
「いや……どうせ死ぬなら……どうやって死のうと……命令に背いて死のうと……意味なんかないですよね……?」
「まったくその通りだ。」
「…………!」
「まったくもって無意味だ。どんなに夢や希望を持っていても、幸福な人生を送ることができたとしても、岩で身体を打ち砕かれても……同じだ。人はいずれ死ぬ。」
――――そう、かつての俺はそう思っていた。
でも今は――――……死ぬなら彼女の側で、その腕に抱かれて死にたいと思ってしまう。
だがそんなことは赦されない。
そんな人間臭い弱さは微塵も見せずに―――――冷酷な悪魔と罵られようと、彼らを死に導くための言葉を続ける。
「――――ならば人生には意味がないのか?そもそも生まれて来たことに意味は無かったのか?死んだ仲間もそうなのか?あの兵士達も……無意味だったのか?」
――――いいや違う。
俺は見つけた。
この心も、愛情も、俺の生まれた意味もすべて――――ナナのところに遺してきた。
だから出来る覚悟がある。
「いや違う!!あの兵士に意味を与えるのは我々だ!!」
ここで散るのは、あくまで――――調査兵団団長エルヴィン・スミスだ。
仲間に恥じない背中を見せて、最期まであがく。
生きて帰れる者達に、これまで捧げてきた兵士たちの心臓の重さと生きた意味を託して。