第155章 ウォール・マリア最終奪還作戦②
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一瞬、空を仰ぐ。
この空をきっと今―――――彼女は見つめているだろう。
俺達の無事を祈って……泣いてないか?
――――なぁ、ナナ。
今一番、君の声が―――――歌が、聴きたい。
また君は俺を「嘘つき」と罵って泣くのかな。
君を散々悪女だと言ったが――――……俺無くして生きられないように仕向けておいて、――――忘れられないように仕向けておいて、先に逝く俺も……相当悪い男だ。
――――もう二度と君をこの手に抱けないことが、こんなにも辛いなんて。
――――だが、情けない顔は見せられない。
俺は今、調査兵団団長エルヴィン・スミスだ。
なんの迷いもなく、これが正しいと信じ込ませて―――――……この若者たちを地獄に導く。
得意だろう?
人を欺くのも、方便を並べるのも。
大きく息を吸う。
これ以上ない説得力と統率力で、この失意のどん底にいる兵士達を鼓舞し、戦わせる。
「これより最終作戦を告げる!!総員整列!!」
新兵達は絶望を貼りつけた顔を上げた。
「総員による騎馬突撃を目標“獣の巨人”に仕掛ける“”当然、目標にとっては格好の的だ!!我々は目標の投石のタイミングを見て一斉に信煙弾を放ち、投石の命中率を少しでも下げる!!我々が囮になる間にリヴァイ兵長とサッシュ分隊長が“獣の巨人”を討ち取る!!以上が作戦だ!!」
作戦を告げた時の皆の顔は―――――死んでも忘れない。
呆然自失というに相応しい、地獄に突き落とされた表情だ。ショックのあまりその場で崩れて嘔吐する者すらいた。
「ここに突っ立っていてもじきに飛んでくる岩を浴びるだけだ!!すぐさま準備に取り掛かれ!!」
準備命令をしても、誰一人動かない。
いや、動かないんじゃない。
動けないんだ。
その中で1人――――フロックが、口を開いた。