第14章 疎通 ※
避難所に私たちが入ると、辺りがザワついた。
壁外調査が行われたあと、調査兵団の兵士が訪れるのは、兵士の殉職を伝えるため――――――それをみんなわかっていた。
みんなが私たちを見つめるなか、一人一点を見つめたまま呆然とする男性が目に留まる。アルルと同じくせ毛と、どこまでも優しそうなその目はアルルと重なった。
「ザガート……さんですか………?」
私がかがんで声をかけると、うつろな目が私に向けられた。
そのあと、胸についている自由の翼のエンブレムを見ると、全てを悟ったような絶望の表情で私を見つめた。
私は耐えられず、零れ出る涙と共に目線を落として絞り出すような声で話した。
「わ……私は、アルルさんの同室の……ナナ・エイルと申します………。今回、こちらに訪れたのは………っ………お知らせしたいことと、お渡ししたいものが……あるからです……っ……。」
私はどうしても、顔が上げられなかった。
奥さんを亡くされたばかりのこの人に、最愛の娘まで亡くなったと告げるのが、怖かった。
その絶望の表情を……見たく、なかった。
「アルル・ザガート新兵は………っ………今回の………壁外調査に……おいて………っ………人類の為に勇敢に戦い………っ…………殉職……しました…………っ………!」
数秒の沈黙だったはずだ。
けれど、その時間はとても長く感じられた。
私が恐る恐る顔をあげると、その表情は悲しみでも、絶望でも、怒りでもなく、ただ感情が無くなってしまったかのようだった。