第155章 ウォール・マリア最終奪還作戦②
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どれだけエルヴィンが苦しんできたかは―――――……わかってる、つもりだった。
これまで死んでいった奴ら、誰もがエルヴィンに心から心酔して納得して死んでいったわけじゃない。
何度も見た。
死ぬ直前に――――その采配に恨みの言葉を遺していった者。血まみれの腕でエルヴィンの足に縋って――――………許さないと言いながら目を見開いて、苦しみもがいた末に死んだ者。
いつだって表情ひとつ変えずにエルヴィンは進み続けて来た。そいつら全ての屍を背負って。
最初はなんて野郎だと思った。
――――それほどまでに人類が大事か、この男を突き動かすものが“人類を救う”という正義感なのだとしたら、クソほどご立派なもんだな、と。
――――だが、ナナと出会ってこいつは変わった。
少し―――――赦されたのだろう。
そして……自分のことを少し、赦せるようになった。
そんな風に、俺には見えた。
そして同時に、こいつの本当の目的も――――夢も、知った。
ナナとその夢を見るようになって………取り繕わない、クソほど意地が悪く、腹黒く、嫉妬深く独占欲が強く、我儘な―――――本当のエルヴィン・スミスを垣間見た。
俺はそれが――――悪くねぇと、思ったんだ。
地下街から俺を引き上げてここに、俺の居場所を作ったのはお前だ。
この地上で……この調査兵団で俺を――――“必要”としたのは、お前だ。
それはきっと――――……こういう時の、ためだろう?