第155章 ウォール・マリア最終奪還作戦②
「新兵とハンジ達の生き残りが馬で一斉に散らばり……帰路を目指すのはどうだ?それを囮にしてお前らを乗せたエレンが駆け抜ける。」
「リヴァイ……お前はどうするつもりだ?」
「俺は獣の相手だ。奴を引きつけて――――」
「無理だ。近付くことすらできない。」
「だろうな。だが……お前とエレンが生きて帰ればまだ望みはある。既に状況はそういう段階にあると思わないか?大敗北だ。正直言って……俺はもう誰も生きて帰れないとすら思っている………。だが、諦めるわけにはいかねぇんだよ。」
「―――反撃の手立ては……なくもない。」
「………なに?」
エルヴィンは遠い目をして、また――――言葉を飲み込んだ。
「………なぜそれをすぐに言わない?……なぜクソみてぇな面して黙っている?」
「……この作戦が上手くいけば……お前は獣を仕留めることができるかもしれない。ここにいる新兵と、私の命を捧げればな。」
「――――………。」
「お前の言う通りだ。どの道我々は殆ど死ぬだろう。いや……全滅する可能性のほうがずっと高い。それならば玉砕覚悟で勝機に懸ける戦法もやむ無しなのだが……そのためにはあの若者達に死んでくれと……一流の詐欺師のように体のいい方便を並べなくてはならない。私が先頭を走らなければ誰も続く者はいないだろう。そして真っ先に死ぬ。――――地下室に何があるのか……知ることもなくな……。」
「………は?」
エルヴィンはため息をついて、そこにあった木箱に腰をかけた。
――――まるで、駄々をこねるガキのような顔で。
「――――俺はこのまま、地下室に行きたい………。」