第155章 ウォール・マリア最終奪還作戦②
「……わからない。だが大半はあの爆風に巻き込まれたようだ……我々は甚大な被害を受けている。獣は兵士が前方の一か所にあつまるように小型の巨人を操作していたのだろう。そこで小型の巨人を相手にしていたディルク・マレーネ・クラース班は先ほどの投石で全滅したようだ。」
エルヴィンの口から語られる現状はまさに惨状だ。
これ以上無いほどの最悪の状態だった。
「つまり内門側の残存兵力は、新米調査兵士の諸君達とリヴァイ兵士長。そして、私だ。」
また投石により、俺達が身を隠しているその場所すら―――――もう到底次の投石を防げそうにない。
「うわぁぁあああああ!!」
「ひいぃぃいいぃぃ!!!」
「もうダメだぁあああああ!!!」
「おしまいだ……っ……何で俺、こんなところに……っ……!」
「死にたく、ないっ………あぁああぁああ!!!」
阿鼻叫喚の中、表情一つ崩さないエルヴィンに問う。
「エルヴィン………何か………策はあるか?」
その時、ドォン!!!と音がした壁上を見上げると――――……巨人化したエレンが、壁上に引っかかっている。
「おいあれは……エレンか?………壁の上まで……吹っ飛ばされたってわけか。超大型に。」
そうしている間も投石は止まない。
街が――――更地と化すまで、もうあと僅かだ。
「獣はここらに当たりをつけたみてぇだな。ここもすぐに蜂の巣になる。」
―――――全滅するわけにはいかない。
せめて、せめてエルヴィンとエレンを生かして帰す。
そう――――約束したんだ。
あいつの望むものは、俺が守ってやると。
「エルヴィン……反撃の手数が何も残されてねぇって言うんなら、敗走の準備をするぞ……。壁上で伸びてるエレンを起こしてこい。そのエレンにお前と何人かを乗せて逃げろ。少しでも生存者を残す。」
絶望の淵に泣き叫ぶ新兵を横目に、エルヴィンは黙ったまま動かない。