第155章 ウォール・マリア最終奪還作戦②
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巨人の断末魔のような雄たけびが響いた。
―――――これは何かの合図だ。
獣を注視すると、四足歩行の巨人の鞍に括りつけていた樽を、シガンシナ区内に投げて寄越した。
――――おそらくあの樽の中にいる――――……超大型巨人……ベルトルトが。
「―――――……やられた……っ……!」
空中で巨人化されれば、シガンシナ区一体が吹き飛ぶほどの爆発が起こる。そこにいる兵士の多くは死滅するだろう。
――――だが、ベルトルトは巨人化しなかった。
彼の姿のまま、樽から飛び出て―――――鎧を……ライナーを助けに向かったようだ。なんとか兵の多くの命は繋がった。
ここから超大型をどうするかは―――――、ハンジとアルミンの判断にゆだねる。どちらにせよシガンシナ区内で超大型を仕留める方法を考えるはずだ。
――――それしか、ないのだから。
区内にも逃げられない。
区外には獣の包囲網か………。
獣はそこから一向に動こうとしない。
こちらに近付けば身の危険があるとでも感じ取っているのか。あの図体で余程の慎重派と見える。自分は高みの見物というわけか。
何を狙っている?馬を全滅させて――――補給路を断てば、戦わずとも我々が飢えて弱る。
それまで待って戦わずしてエレンを連れ去るつもりか?
だとしたら奴らにとっての誤算要素はある。今まさにこちらに向かっているであろう、サッシュの補給小隊だ。
「――――……何日も待つほど、敵に猶予はあるのか……?」
――――その時、シガンシナ区内で動きがあった。