第154章 ウォール・マリア最終奪還作戦
また壁上から戦況を見守る。
どんな変化も見逃してはならない。
馬を守るために戦う班は、3~4m級の巨人にも手こずり負傷者を出している。今の調査兵団には以前のような力はない。
――――脳裏にミケ、ナナバ、ゲルガー……グンタ、ペトラ、オルオ、エルド……散って行った勇敢な仲間の顔が浮かぶ。
だがそれだけの損害がなければ、ここまで辿り着くことすらできなかった。
――――いつからだろう、父の立てた仮説を……誰にも話さなくなったのは。
そう、調査兵団に入ってからだ。
……唯一話したのは――――、その足と引き換えに私の命を救ってくれた、ショウ隊長だけだった。
なぜ誰にも話さなかったのか。……話せなかったんだ。仲間たちは皆人類のために全てを捧げ、死にゆく中で――――私だけが、自分のために戦っていた。
自分が犯した罪を償うために、父と母から赦されるために、真実に辿り着こうと。
いつしか私は部下を従えるようになり、仲間を鼓舞した。
人類のために心臓を捧げよと。
――――そうやって仲間を騙し、自分を騙し、築き上げた屍の山の上に―――――今も私は立っている。
日に日に彼らが流す血の重さで、屍の重さで身動きが取れなくなっていく中、5年前のあの日、彼女は目を輝かして真っすぐに私に告げた。
“私は壁の外の更に向こう、海を越えた文化や国々に出会いたい。私は信じているのです。この遥か空の下に、違う生き方をしている人間がいるのだと。”