第154章 ウォール・マリア最終奪還作戦
「――――敵は少なくとも5分以上前に我々の接近を知る何かしらの術を持ち、我々の接近に備える時間も十分にあったというわけだ。」
「つ、つまり壁の上にいた3人以外の斥候が存在して……イヤもっと大勢の敵が潜んでいると想定すべきで……。」
アルレルトは怯えた表情を見せた。
それはそうだ。
どこからどう我々を見て、次の一手を考えているのかと想像するだけで怖気づくのは分かる。だが、それに怯えて次のこちらの一手を間違うわけにはいかない。
「今は敵の位置の特定を第一とする。アルレルト。君はその頭で何度も我々を窮地から救い出してくれた。まさに今その力が必要な時だ。必要な数の兵を動かし、内門周辺に敵が潜んでいないか探り出してくれ。」
左腕を上げて周囲の班長を呼び集める。
「エルヴィン団長!!周囲に異常は見当たりません!!」
「これよりアルミン・アルレルトの指示に従い捜索を続行せよ。」
「!!」
――――新兵のアルレルトに課すには重責だろう。
だがやってのけてもらわなくては困る。
適材適所だ。彼の頭脳は、ここぞという時にその力を存分に発揮する。
各班長達の目線が、アルレルトに注がれる。その圧にアルレルトは蒼白だった。
「……了解!!壁は隅々まで調べ上げたぞ!!さぁ指示をくれアルレルト!!」
「………区外、区内の二手に分かれて内門周辺の建物を調べてください。何かあれば音響弾で報せを……お、お願いします……。」
「了解!!」
各班長から兵員に伝達、内門周辺の捜索が始まった。
この敵地で長居はできない。
「すべては敵の思惑通りだとしても……隠し事があるのは彼らだけではないからな……。」
左腕に備え付けた雷槍の固定具。
奴らには知り得ない武器だ。鎧をも貫ける。
――――あの悪夢を2度と起こさないためにも。
ナナと見る夢のためにも。
今日ここで―――――奴らとケリをつける。