第154章 ウォール・マリア最終奪還作戦
「……何で君はあんなことができたの?君が僕の身代わりになるなんて……あってはならなかったんだよ……。」
そうだ、俺はあの時確かに―――――小さい頃のアルミンの目を、思い出した。外の世界のことが書かれた、じいちゃんから託された本を大事そうに抱えて、それを喜々として俺に語る、あの頃の――――ガキの頃のアルミン。
その目を見て思った。なんて楽しそうだって。
なんで――――俺にはなにも無いんだって。
「――――お前が目を輝かせているのを見て、俺は思ったんだ。俺は――――不自由なんだって。だから俺は自由を取り返すためなら……力が沸いて来る。」
そうだ、自由だ。
俺達が取り戻したいのは――――、手に入れたいのは。
誰にも縛られない世界。
不思議と、体の震えが止まった。
「あぁそれに……あの時、僕は、ナナさんにこっぴどく叱られたんだ。」
アルミンがあの時のことを思い出して、小さく笑った。
「ナナに?あいつ、怒るのか?」
「そう、初めて見たよ。ナナさんもまた――――エレンが僕の代わりに食われたその瞬間に、僕の前に立ちふさがって―――――巨人に刃を向けたんだ。なんであんなことができたんだろう。……訓練も受けてない、戦うために兵士になった人じゃないのに。怖くないわけが、ないのに。」
「――――なんて言ったんだよ、ナナは。」
「………『自分の無力さに打ちひしがれるのは後でいい』『今出来る事を、あなたにしか出来ない事を考えなさい』って。」
「――――………。」
「僕は弱いし、戦力にはなり得ない。けれど――――僕にしか出来ないことがあるなら……それをエレンたちが……みんなが信じてくれるなら、僕はやれる。やってみせる。」
アルミンのその横顔は、俺なんかよりもずっと大人で――――、俺達は……もうあの頃の、巨人に怯えて兵士に憧れる子供じゃないんだなと、思った。
「――――お前も十分、すげぇよ。」