第154章 ウォール・マリア最終奪還作戦
闇夜の中、光る鉱石の明かりを頼りに進む。
もちろん馬で駆けることはできないから、進度は遅いものの……巨人と戦う必要がないのは、兵力的にも時間的にも作戦自体に有利に働く。
山道を歩きながら――――もう随分経った。
身体の疲労と比例してか、良くない後ろ向きな思考が徐々に頭の中に首をもたげて来た。――――この作戦は、俺の硬質化の精度にかかっていると言っても過言じゃない。俺がヘマをすると、ここにいるみんなが―――――、いや、それだけじゃない。ナナを含めた壁内人類のみんなが――――死ぬ。
体がガタガタと、震えはじめた。
次の機会なんてない。しゃんとしなきゃいけないのに。やっぱりこんな俺で務まるのだろうか。どうやってこんな奴が人類を救うんだ?
「―――どうしたの震えて?怖いの?」
俺の横を歩いていたアルミンが俺の顔を覗き込んで問いかける。
「は……はぁ?!怖くねぇし!!」
「えぇ?ウソだぁ手が震えてるもん。」
「これは……寒いんだよ。手がなんかすっげぇ寒い。」
「そうなの?僕なんかずっと震えが止まんないんだけど……。ほら。」
ライトを持つアルミンの手が、確かに震えている。
「エレンって巨人が怖いと思ったことある?普通は皆巨人が怖いんだよ。僕なんか……初めて巨人と対峙した時、全く動けなくなったんだ。君と……仲間が食われていた最中だった。でも……そんな僕を……君は、巨人の口から出してくれたんだ。」
――――もう何年も前のことのように感じる。
多くの血が流れた様々な記憶の中をぬって、その時の事を思い起す。