第153章 夕陽
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作戦決行の朝。
――――すべての準備は整った。
ナナが自由の翼を背負わせてくれる。
そして――――まじないのように、ループタイを締めて――――、ナナは祈るようにループタイにキスをした。
自室を出る前に、乱れたシーツとテーブルに置いたままの2脚のワイングラスと空き瓶が目に入ったのか、ナナが急いで片付けようとするが、私はそれを止めた。
「――――いいよナナ。」
「………?」
「――――片付けない。帰ってから、ゆっくり片付けるとしよう。」
「………はい!」
ナナは柔らかく笑んで、珍しく散らかったままの自室を2人、後にした。
ご丁寧に各兵団のトップが見送りと激励に足を運んでくれ、ウォール・マリア奪還を誓って心臓を捧げる。
日が傾いてから、トロスト区の壁上にリフトで上がる。
街を見下ろすと、いつもより随分人が多く賑わっている。そんな中、高台に登ってこちらに向かって叫んでいる人物がいる。
「ハンジさぁあああああん!!」
「……フレーゲルさん!ハンジさん、あそこです!」
ナナが嬉しそうにハンジの目線を指さした先に誘導する。
「本当だ!見送りに来てくれたんだね。」
「ああ、リーブス商会の子息か。」
「そう、なんとか街の立て直しも頑張ってるみたいだね。良かった。」
「リヴァイ兵士長!!宝石商のご主人も来て下さってます!!」
「あ………?」
翼の日に調査兵団への投資に応じてくれた商家だ。ナナとリヴァイに向かって手を振っている。
壁上から街を見下ろすと、リーブス商会や様々な商人たちのおかげで随分活気を取り戻していることもうかがえる。