第153章 夕陽
「――――帰ったら、あの歌の意味を聞かせろ。」
急な問に、どの歌??と首を傾げる。
「――――お前が入団した日に俺に向けて歌った歌だ。――――エロい意味の。」
「エロい意味?!」
そんな歌あったっけ……いや、あるはずないんだけれども……。うーん、と5年も前の、ハンジさんの研究室で口ずさんだシーンを頭の中から掘り起こしてみる。
リヴァイ兵士長の “兵士長としての初めての命令” で歌わせてくれた歌。
あぁそうか。思い出した。
「あぁ、私が歌詞の意味を言えずに動揺したから………。」
「………あぁ、相当エロい意味なんだろ?」
「エロくて動揺したわけじゃありません。」
「なんだそうか。」
「なんでちょっとがっかりするんですか。」
「――――壁外調査の前後は昂るからな。お前にエロい言葉を言わせてやろうと思った。」
「――――ふ。」
「……………。」
「ふふ、あはは………。」
おかしくて私が笑う姿を、少し安心したように、優しい目で――――リヴァイ兵士長……ううん、あれはリヴァイさんの顔だ。
彼は私を見つめていた。
心配するなって、悲しい顔は見たくないって………なんて回りくどくて、分かりにくくて、優しい。
「――――エロくは、ないですけど。」
「………あ?」
「あの歌の意味を、ちゃんとあなたに伝えます。だから――――無事に帰って来て下さいね。」
「――――日が落ちたな。」
「……え?はい……。――――あ。」
きつくきつく、体を締め付けるように抱き締められていた。