第153章 夕陽
「――――盗み聞きですか?リヴァイ兵士長。」
「――――気付いてたのか。」
ふふ、と笑って振り返ると、不機嫌そうなリヴァイ兵士長が腕を組んで立っている。
「――――気配がしました。けれどなんの物音もしなかったから。そんなことができるのは、あなただけです。」
「――――……なにやってる。1人になるな。お前が1人でいるとろくな事が起きない。」
「そうですね。」
「――――………。」
「――――だから帰って来て、くださいね。」
俯いたまま、少しの弱音が混じった我儘を言う。
「――――待ってる、から………。………一人に、しないで………。みんなで、ここに……帰って、来て………。」
「――――当たり前だ。」
リヴァイ兵士長は私の横に並んで、2人で昼と夜の狭間―――――黄昏時の地平線を眺めた。
「――――お前の誕生日もまだ祝ってねぇしな。」
「………覚えてて……くれたんですか。」
「――――あのクソみたいな絵を描かされた日だぞ?一生忘れねえ。」
「……ふふっ……、あれは私の、宝物です。」
「――――そんな後生大事にするほどのもんじゃねぇだろ。」
「いえ、大事ですよ、だって―――――……。」
「――――何枚だって描いてやる、これからも。」
生きて帰る。
ずっとお前の側にいてやる、これからも。
そう――――言ってくれてる。
あなたのその不器用な優しさを示せる、あなたが大事に想う仲間もまた――――、誰一人失ってほしくない。
私は夜通し祈り続けよう。
神様なんていない残酷な世界でも。
僅かな望みをかけて。
少しの間何も言わず2人、闇が朱い空を侵食していく様子を眺めていた。
するとふとリヴァイ兵士長が口を開く。