第153章 夕陽
「………私は強欲だと有名なんですけど。」
「………はぁ………?」
何を言い出すのか、とぽかんとした顔をしている。
「――――ハンジさんだけじゃなく、モブリットさんにも無事でいて欲しいです。」
「――――………。」
「――――私もう、ハンジさんの研究室のどこになにがあるか、あまり把握できてません。それはもう――――あなたが一番知ってるから。」
「――――はい。」
「――――片付けずに待ってます、ハンジさんの……研究室。」
モブリットさんは嬉しそうに、照れたように笑った。
「そうですね。無事帰ったら………巨人の謎を解く鍵に辿り着いて、生きて戻れたら――――、あの膨大な資料の山も、少しは整理できますね。」
「そうですよ!その時は私、手伝います!」
「ふふ、はい。ぜひお願いします。」
生きて帰った未来の話をする。
それだけで、叶うこともあるかもしれない。
そんなちっぽけな期待を寄せて、一人一人の仲間と少しでも話をして回る。エレン、ミカサ、アルミン、ジャン、サシャ、コニー、オリバーさん、バリスさん、フィオ……もう特に親しい面々は、そもそも数えるほどだ……。
実践経験がほとんどない兵士が大半で、これまで以上の強敵だ。
考えれば考えるほど――――怖い。
でも、行かない私が怖がってばかりじゃいけない。
できることを、やらなくちゃ。