第153章 夕陽
「――――リンファがここにいたら、きっとこう言いますね。」
「…………。」
「『兄弟でいちゃいちゃすんなよ。まったく………まぁあたしは、そんなあんたたちが嫌いじゃないけど。』」
「―――――………。」
「―――――………。」
2人はぽかんとした顔で私を見て、切なそうに、嬉しそうに、自分の中にいる彼女の笑顔と声で、それを再生しなおすように、その時を噛みしめて俯いた。
「――――行ってらっしゃい。お2人共、どうか無事で。リンファとここで、待ってます。」
サッシュさんとアーチさんは無言で2人目を合わすと、何かの決意を示すように、深く頷いて――――がつがつと、すごい勢いで朝食を食べた。
それから、朝食を終えて食堂を出たその廊下の先で、また話したかった人を見つけた。
「――――モブリットさん!」
「――――ナナさん。」
モブリットさんに駆け寄ると、モブリットさんは柔らかい笑みを見せてくれる。
「元気そうで何よりです。」
「はい!」
モブリットさんは私の病の事を知っている。
いつか酔っぱらったハンジさんが泣き上戸になって私の病のことをモブリットさんに涙ながらに話してしまったらしい。それからというもの、とてもとても心配してくれて私のことを気遣ってくれる。
「大丈夫ですよ、分隊長が無茶しないようにちゃんと見てますんで、自分が。」
「それははい、どうか宜しくお願いします。」
頭をぺこりと下げると、モブリットさんははは、と小さく声を出して笑った。
「相手は強敵だ。……大丈夫、命に代えても守ります。……あの人のこと。」
モブリットさんは静かに滾る闘志を内に秘めて、固い決意を示した。
でも――――……そんな彼にもどうしても伝えたかった。