第153章 夕陽
「ありがとうございます。どうか……どうか無事で。サッシュさんの小隊は、今日クインタ区に向けて一足早く発つんですよね。」
「ああ。任しとけ!心配すんなよ。」
「………ところで、そろそろ声をかけてあげませんか?」
「………だな。」
2人目を合わせてから、肩をすくめてひひ、と小さく笑って――――、食堂の隅の方を振り返る。そして―――――サッシュさんが大きな声で彼を呼んだ。
「――――なにしてんだ、来いよアーチ!」
「――――ほら、席あんまりないんですから、こっちどうぞ。」
「……………!」
アーチさんが、驚いた顔をした後に少し、恥ずかしそうに俯いた。そしておずおずとしながらもこちらに近付いて来て、言われた通り私たちの側の席に座った。
「よぉ、よく眠れたか?新兵!」
サッシュさんががしがしとアーチさんの頭を撫でる。
それを疎ましそうに振り払おうとする彼は、どこか――――嬉しそうだ。
「やめろよ、兄ちゃん……!」
「――――おいおい、俺は上官だぞ?ちゃんと “分隊長” って呼べよ。」
「………だって対人なら俺の方が強いしなぁ、そう言われても………。」
「あん?生意気だなお前。俺に負けて泣いてたくせによ。」
「泣いてねぇよ!!!」
「ふふっ………!」
そんな2人のやりとりを見て、嬉しくて、胸が温かくて。
私は笑ったはずだった。
「………おい、ナナなに泣いてんだよ……!」
「………え?」
サッシュさんが慌てて私を覗き込むから、涙が流れていることに気付いて―――――それを拭った。
――――あぁそうか、きっと………私の目を通して、リンファが喜んでるんだ。