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【進撃の巨人】片翼のきみと

第153章 夕陽




朝食時の食堂は――――いつもと様子が違った。

いつも壁外調査の直前は、静まり返っているのに。今日はがやがやと、活気に満ち溢れている。あちらこちらで、ウォール・マリア奪還を固く決意するような、お互いを鼓舞するような会話が聞こえる。

なんとなく異質な雰囲気を感じるのは、私が前の調査兵団を知っているからだ。調査兵団としての歴が浅く、まだ巨人に相対したこともない兵士も多い。自分が英雄になるんだ、とでも言わんばかりに雄弁な人もいる。



「うるせぇなぁ。ま、活気ってもんか?こりゃ。」



食事を受け取ってから、なんとなく雰囲気に馴染めず立ち尽くす私の後ろから、サッシュさんが声をかけた。



「サッシュ分隊長。おはようございます。」

「おはようナナ。ちゃんと食ってるか?いや少ねぇよ。これも食え。」



サッシュさんはいつの日かのリンファのようだ。

私のことをよく見てくれていて、食べるものや振る舞いにも口を出してくる……リンファが姉なら、サッシュさんは兄のよう。

自分のお皿に乗ってたフルーツを、私のお皿に乗せた。フルーツなら食べるってことも、知ってるんだ。



「えっ、あ………ふふ、ありがとうございます。」

「一緒に食うか?」

「はい!嬉しい。」



サッシュさんと連れ立って朝食の席に着く。今日の作戦のことを話しながら、時に思い出話をしながらする食事は、いつもよりも進む。私は、とあるお願いをしてみることにした。



「――――サッシュさん。」

「ん?」

「分隊長のサッシュさんにじゃなく、ただのサッシュさんにお願いがあるんです。」

「あんだよ。」



サッシュさんはパンを頬張りながら目線をこっちにくれた。

私は結っていた髪から、リンファとお揃いの髪飾りを抜き取って、サッシュさんの目の前に置いた。



「――――私の代わりに、連れてってもらえませんか。」



「――――………。」





サッシュさんは一瞬目を開いて、それを懐かしむように見つめて―――――、ふっと、笑った。





「――――引き受ける。」





目を細めてそれを受け取ると―――、何かを祈るように額に寄せて、自由の翼の付いた胸ポケットにしまった。



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