第152章 可惜夜
―――――――――――――――――――――
前祝は大層盛り上がっていたようだ。
それを見届けて、悪いなとも思いながら早々に部屋に戻った。
この作戦に失敗は許されない。
人類の存亡がかかっているのだから。
あらゆる想定をしつくしても足りない。
何度も何度も作戦企画紙を見ては、ライナーやベルトルトの思考……そして獣の巨人のこれまでの動きなどから行動を予測する。気付けば、とうに深夜をまわっていた。
「――――きりがないな。一段落としよう。」
―――かと言って眠る気にもならないな。
こういう大きな出兵の前の夜は――――、決まって彼らが訪ねて来るから。
――――今まで俺が死なせた、仲間たちが。
だが眠らないと思考も鈍る。
仕方なくベッドに横にはなるか、と伸びをすると、控えめにコンコン、と扉が鳴った。
――――この控えめな音は、ナナだ。
「――――どうぞ。」
「………まだ、起きてたのですか。」
「こっちのセリフだ。深夜を回っての執務は許さない約束だが?」
チラリとナナを見ると、ナナは結っていた髪を解いた。
「――――補佐官としてじゃなく、ナナとして来たからいいの……。」
「――――屁理屈だな。」
ふ、と笑うと、ナナは足早に歩み寄って俺にぎゅ、と抱きついた。
「――――どうした?」
「少しだけこうしたら、ちゃんと部屋に帰る………。」
微かにナナが震えている。
――――誰かを失うかもしれないことに、ひどく怯えているのか。
「大事な作戦の前だ。ちゃんと眠りたい。」
「――――ごめん、なさい……。」
ナナは叱られた子供のように泣き出しそうな顔で身体を離した。そのナナの身体を強く引き寄せる。
「――――だからここにいろ。俺の側に。君がいるとよく眠れる。」
「――――うん………。」