第152章 可惜夜
「――――今は俺の女じゃねぇが、俺が手をつけてる。触るな。」
ナナの肩を引き寄せて、殺気を込めてその男を睨むとそいつはサッと目を逸らした。この程度でビビるような覚悟でナナに手を出そうとしてんじゃねぇよ。
「なんだよ……!とんだビッチじゃねぇか……!」
そう言って見慣れない若い兵士は去って行った。
「――――本当に毎度毎度お前は……。」
はぁ、とため息をつくと、ナナは物申すようにしてまた唇を尖らせた。
「ちゃんとかわそうとしましたよ?でもかわす前にリヴァイ兵士長が来ちゃったんです。」
「口答えするな。」
「……あの。」
「なんだ。」
「ビッチ、ってなんですか?」
「…………。」
真面目な顔で俺に問う。
「褒め言葉じゃないことだけは分かりました。」
「…………売女とか、ケツが軽いとか……そう言う意味だ。」
「ああ、なるほど!」
ナナはへぇ、と目線を上に上げて能天気に言い放った。なんなんだこいつは本当に。
「ふしだらな女……売女……、ビッチ………。」
ナナは指を折りながらなぜかその罵る言葉を数えだした。そして、ふふっと笑う。
「わぁ、同じ意味でも色々あるんですね。いっそ制覇してしまいたくなります。」
「なんだ、そんな言われることがあんのか?」
「はい、ビッチは初めて言われました。」
「………傷付くだろ。大丈夫か。」
「いえ?全く。」
ナナは本当になんの気にもとめていない様子で、あっけらかんと言い放った。