第152章 可惜夜
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前祝にチラッと顔を出していたエルヴィンも、まだ詰め切ることが残っているのだろう、早々に抜けていた。ハンジはいつものごとく悪酔いしやがって、モブリットが抱えて帰って行った。
ナナを目で追っていると、1人ぼんやりと吸い寄せられるように月の見える外へと歩き出した。
「――――ちっ……あいつは……。」
リンファがいなくなってから、ナナは誰とも深くつるむこともない。こういう時にはいつも一人でいて、月を見上げてはリンファの面影を探しているのか、よくぼんやりとしていることがある。
いくら調査兵団の兵舎とはいえ、ここは昔の調査兵団とは違う。編入してきた奴らばかりで、まだ人となりもわからねぇ奴らもいる。
一人でうろうろすんじゃねぇよ、と後を追うと、ナナは小さな声で歌っていた。ああそうか、こうやってこいつはいつも――――1人屋上で歌っていたんだったな。
2日後に俺達が発って………1人ここに残るその寂しさや失う恐怖をなんとかしようとしているのか。
そんなナナに、やっぱりだ。誰か近付いて来る。ナナに話しかけると、ナナはきょとんとした顔をしている。見覚えがない奴なんだろう。
会話の内容は聞こえねぇが、へらへらと話す男に対して、ナナは困ったように眉を下げて首を横に振った。それでも引き下がらねぇそいつは、ナナの肩を掴んだ。
「――――おい、何やってる?」
「……リヴァイ兵士長……。」
「……っ……兵長………!」
その男はビクッと身体を強張らせて、話が違うとでも言いたそうにナナを横目で見た。
「兵長のものじゃないって言ったじゃないすか……っ……!」
「??そうです、兵士長のものではありません。――――ただ特別な人です。」
「は………?!」
「――――やめろナナ、こじれるだけだろ。」
「だって………。」
ナナが拗ねたように唇を尖らせた。