第152章 可惜夜
食堂に着くと、なにやらとっても騒がしい。珍しいほど豪華な食事が並んでいて、みんなが奪い合うようにして食事をとっている。
「わぁ……ふふ、大変ですね、これは。」
「ちっ………騒ぐなっつってんのに………。」
そっと端の席に座ろうとしたのだけど、なぜか食堂の隅の柱に縛り付けられているサシャを見つけた。
「えっ?!サシャ?!」
慌てて縄を解こうと駆け寄ると、サッシュさんが私を呼び止めた。
「やめとけナナ!サシャは皆の肉を1人で食おうとしてそこに縛られたんだ。飯が終わるまではそうしとこうぜ。ほら、ナナ食えるか?」
サッシュさんは私が以前倒れた日のことを知っているから、私の体調をとても気遣ってくれる。切り分けられたお肉やお料理を乗せたお皿を手渡してくれた。
「サッシュさん……あ、ありがとうございます。そうだったんですね……サシャらしいと言うか…。」
呆れながらも笑みが零れる。
「あ……そうだ、サッシュさん!分隊長就任おめでとうございます!!」
「や、まぁ、ありがとな。」
今回の作戦から、サッシュさんが分隊長として昇格されることになった。
元々持つ兵団指折りの戦闘力に加えて、仲間からの人望や状況判断力、統率力……どれをとっても相応しいというエルヴィン団長、リヴァイ兵士長、ハンジ分隊長のお墨付きだ。
あの日――――……ビクターさんの一件の日、私が間違った気遣いの元でサッシュさんに全てを隠したままにしていたら……彼はここまですごい兵士にならなかったかもしれない。
あの日以来だ。
サッシュさんが仲間への接し方や態度を改めたのは。
それをちゃんと厳しくも導いたリヴァイ兵士長のことを……やっぱり凄い人だと思う。
現にサッシュさんも、リヴァイ兵士長の背中を追ってここまで来た。