第152章 可惜夜
「――――取り憑かれちゃうのも、分かるんです。私も―――――ただ一人の……特別になりたいというその気持ちは、知っているから。」
「――――………。」
「ごめんなさい、行きましょうか!」
にこ、と笑って扉の方へ寄ると、リヴァイさんの様子が少し変だと気付いた。何を葛藤しているのか、目の奥に迷いを秘めたまま、何かを抑え込むように俯いた。
「………リヴァイ、さん?」
私が顔を覗き込むと、私に目を見られるのを避けるように顔を背けた。
――――悟られたくない葛藤があるのか。
それなら無理を強いないように、一歩下がって距離を取った。私が下がったその瞬間に、リヴァイさんはぴく、と反応したかと思えば―――――、ぐっと力強く私の腕を掴んだ。
「――――お前は―――――………。」
「…………?」
それだけを呟いて、何も言葉を続けないまま、目を伏せて黙った。
「………どうかしましたか……?」
「――――いや………なんでもない。」
「そうですか?」
「…………。」
「――――変なリヴァイさん。」
「……誰のせいだ誰の。」
「えっ。」
「――――お前ほど厄介な女は他にいねぇよ。」
「えぇ……。」
どう返答してよいものか、と眉を下げて俯くと、リヴァイさんの指が私の顎を掬って顔を上げさせた。
不謹慎にも小さく心臓が跳ねる。
「――――顔色がマシだな。」
「はい。元気です。」
「――――ならいい。行くか。」
「はい!」
そう言って連れ立って食堂へ向かった。