第151章 無二
―――――――――――――――――――――
「――――まったく、するどい奴だ……。」
リヴァイが部屋を去ってから、はぁ、と息を吐いて椅子の背もたれにどっと背を預ける。
納得いってないという様子だったな。
リヴァイの読み通りだ。
俺は―――――ナナにも打ち明けていないことを果たそうとしている。
それは―――――今まで死なせて来た仲間に報いるためにつけるべきであろうけじめだ。
母と父のことは、ナナがそのしがらみを解いて赦してくれたから。真実を求める事を贖罪としてでなく―――――ナナとの夢のためと、今の俺なら思える。
――――だが、俺が今まで死なせて来た仲間にはどう顔向けできる?
人類のために心臓を捧げよと、死ねと―――――鼓舞しては死に導いて来た数多の仲間たちの顔が脳裏に浮かぶ。
ナナを抱いて眠る夜には彼らは現れないが、未だに一人で眠る夜は―――――……夢枕に血まみれの仲間たちが立つ。 “人類を救うために捧げた自らの心臓の行末” を見に来ているんだ。
ならば俺が果たさなくてはならない。
どれだけ危険であろうと、死ぬ可能性があるとしても、この壁の中の人類の未来を左右するその瞬間は―――――彼らの命を使った俺が立ち会わなければならない。
以前のように戦えない身体になったからと言って、俺だけが死地に赴かず愛する女性と壁内で果報を待つなんて―――――
許せないだろう?