第151章 無二
「――――思うわけねぇだろ……。」
「本当に?」
「――――クソが……本当にその両脚、折ってやろうか。ちゃんと後で繋がりやすいようにしてみせる。だがウォール・マリア奪還作戦は確実にお留守番しねぇとな。しばらくは便所に行くのも苦労するぜ?」
「はは……それは困るな……。確かにお前の言う通り……手負いの兵士は現場を退く頃かもしれない。」
エルヴィンは苦笑した。
相変わらず人の問を煙に巻いてすり替えやがる。
――――答える気はないということか。
「――――でもな。この世の真実が明らかになる瞬間には、私が立ち会わなければならない。」
エルヴィンのその表情、声、話し方で確信した。
こいつの中で今――――― “ナナとの未来” よりも “自分が真相を解き明かすこと” が重くなってきているのだろう。
それがどうしてそうなったのかは――――わからねぇが。
俺に問いかけたのも―――――何を示唆してやがる。
――――本当に底が読めなくて―――――とんでもなくめんどくせぇ奴だ。
「それが……そんなに大事か?てめぇの足より?」
「あぁ。」
「人類の勝利より?」
「あぁ。」
「―――――ナナより?」
「――――ナナとの未来を描くためにも大事なことだ。」
――――真っすぐに脳天を射貫くようなその目で語られたその決意を――――、俺は了承するしか、なかった。
「………そうか。エルヴィン………お前の判断を信じよう。」
俺はエルヴィンの部屋を後にした。