第151章 無二
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その後兵舎に戻るも、長距離の馬での移動でナナの体調が思わしくないように見えたため、早めに自室で早めに休ませ、その間に次の奪還作戦で隊長を務める面々も含めての会議が行われた。
「――――つまり、エレンの父グリシャ・イェーガーは “壁の外から来た人間” である可能性が高いと……。」
エルヴィンはその話を、まるで知っていたように受け取った。
「そう……アニやライナー、ベルトルトと同じように彼は巨人の力を持っていたしね。でもその3人と違うのは……壁の中の人類に協力的だったってこと。――――おそらくはこの壁に入ってから独力で王政を探るなどしていたんだろう。いずれにしても凄まじい意識と覚悟がなきゃできることじゃない。」
「…………。」
淡々と語られるその話を聞きながらあらゆる思索を尽くしている顔でエルヴィンは一点を見つめていた。
「そんなお父さんが調査兵団に入りたいと言った10歳の息子に見せたいと言った家の地下室……死に際にそこにすべてがあると言い遺した地下室……そこには一体なにがあると思う?」
「――――言ってはいけなかったこと……いや、グリシャ氏が言いたくても言えなかったこと。つまり初代レイス王が我々の記憶から決してしまった “世界の記憶” だと思いたいが……ここで考えたところでわかるわけがない。――――本日で全ての準備が整った。ウォール・マリア奪還作戦は2日後に決行する。」
エルヴィンのその言葉に、一同が決意を固める。
「地下室には何があるのか?知りたければ見に行けばいい。それが調査兵団だろ?」
ここにきて調査兵団の本質を全うする任務に就くことが――――、士気を上げるだろう。
一同は深く、穏やかに――――だが闘志を秘めた顔で頷いた。
だが会議を終えて全員が部屋を出たら――――俺はエルヴィンに、話をしなければならない。
その他の面々が退出した扉を、邪魔が入らないように閉める。
エルヴィンに目線をやると、エルヴィンはすぐに顔を上げて俺を捕えた。