第151章 無二
「教官の言うとおり……俺は特別でもなんでもなかった。ただ……特別な父親の息子だった。」
「――――………。」
これまで何人がエレンの為に死んで、何度エレンは自分を責めて――――、その度に思ってきただろう。
『自分にしかない特別な力を持っているから、みんなが自分のために犠牲になっていく』と。
それが――――、彼自身の“個”が特別なわけではなかったと聞いて、何を思うだろう。
何がその胸の内に渦巻くだろう。
「俺が巨人の力を託された理由はやっぱりそれだけだったんです。それがはっきりわかって良かった………。」
「………お前の母さんは、カルラはこう言っていた。」
“特別じゃなきゃいけないんですか?絶対に人から認められなければダメですか?私はそうは思ってませんよ。少なくともこの子は……偉大になんてならなくてもいい。人より優れていなくたって………”
“だって見て下さいよ。―――――こんなに可愛い。”
“だからこの子はもう偉いんです。この世界に、生まれて来てくれたんだから。”
カルラさんの言葉を口に出したキース教官を見て、悟った。
――――愛していたんだろうと。
でなければ、彼女の言葉をいつまでも記憶に留めているわけがない。
でもエレンはその言葉をどこか疎ましそうな表情で聞き流した。