第151章 無二
その日、リヴァイ兵士長とハンジ分隊長、エレンを含む104期の面々と共にその場所へ向かった。
―――――もう3年前になる。
リンファとサッシュさんと、ここに来た。
この3年間、色々な事がありすぎてとてもとても昔の事のように感じるけれど、その思い出は昨日のことのように鮮明だ。冷たい風に吹かれて砂埃が舞う。
3年前と変わらない、若き訓練兵たちが日々訓練に励むための巨人を模した模型や、立体機動の基礎を学ぶための装置などが配置されている訓練場。
訓練兵団の中でも、巨人との遭遇率が高い南方駐屯訓練兵団はその敷地面積も兵士を抱える人数も大きい。むき出しの岩肌を、立体機動のワイヤーだけを頼りによじ登っているその訓練兵の手足は震えていた。
それを厳しい表情のまま見つめるのは――――、鬼教官と名高い、キース・シャーディス教官その人だ。
エレンが呼びかけると、何の感情も読み取れない表情で振り向いたキース教官は、教官室に私たちを招き入れてくれた。
「……シャーディス教官殿。ウォール・マリア奪還を目前に控えた我々が今ここに詰め寄る理由を察しておいででしょうか?」
キース教官の表情は……なんとも言い難い表情だった。
鬼教官と言われるほどの覇気はなく、エレンを見つめるその目は―――――どこか悲しく、苦々しい。
「エレン……お前は母親とよく似ているな。」
「!!」
「だが……その瞳の奥に宿す牙は、父親そのものだ。」
――――やはり何か知っている。グリシャ・イェーガーの過去を。
「話してください!!知っていること全て!!」
エレンが椅子を跳ね除けて立ち上がり、すごい剣幕で詰め寄る。
「――――何も知らない。結論から言えばな。………だが………人類の利になり得ない話でよければ聞いてくれ。傍観者に過ぎない、私の思い出話を―――――。」