第150章 恵愛 ※
「――――綺麗だ。」
「………ありがとう。」
「こうやって花の “命” を手折って君に与えたら、君の命が増えたらいいのにな。」
「……ふふっ、エルヴィンこそすごくおとぎ話みたいなことを言う。」
「君の影響だな。――――君は、俺のお姫様だから。」
私を見つめて頬に手をやるエルヴィンは本当に私を心の底から愛していると、その仕草も表情も声も全てが物語っていて――――、私はこの人に愛されるために生まれてきたのかもしれないと馬鹿げたことを妄想する。
「――――目を閉じて、ナナ。」
「??」
「いいから。」
――――キス、されるのかと思った。
少しドキドキしながら、そっと目を閉じる。でも、一向に唇に体温を感じない。なんだろう、と思っていると、何かが肩にふわり、とかかった感触がした。
「――――開けていいよ。」
エルヴィンのどこまでも優しい声に誘われるようにゆっくりと目を開ける。
「――――え………?」
「――――これも挿せば、完成だ。」
私の頭にふわりと被せられたのは、その隙間から太陽の光を柔らかに通している、繊細すぎる細工で織られた極上のレースがあしらわれた―――――ヴェールだ。
純白でなく、少し生成りの奥ゆかしい色合いのチュール生地。頭から肩、さらには腰の付近までかけて、美しいレースが豪華にあしらわれている。
エルヴィンは私の耳に刺した白い花の続きに、キラキラと輝く石が品よくちりばめられた小ぶりなコームを刺した。
何が起こったのかと目を丸くしていると、エルヴィンが口を開いた。