第150章 恵愛 ※
「あはは!!そう、そうだった。エルヴィンには―――――聞こえるんだったね、私の声が。」
「そうだよ。習得するのに何年かかったと思う?この能力を。」
「――――そうかぁ、エルヴィンとこの先を生きていくなら、その装置はもう必要なさそう。じゃあ代わりに……そうだなぁ。声だけじゃなく、この目で見たものをそのまま残せたり、誰かに伝えられるように切り取れたらいいのにね。」
「――――ほう、それは面白い。」
「人それぞれ、自分の価値観で物事を見るでしょう?それはね、きっと自分だけの色眼鏡をかけて見ているから―――――、真実を映し出してくれる鏡みたいなものが、あればいいのにって。」
私がいくらおかしな空想を話しても、エルヴィンはひたすらに幸せそうに私を見上げて、話を聞いてくれる。
「――――君の頭の中にはおとぎ話の世界が広がっているみたいだ。」
「――――笑う?」
「――――いや。素敵だ。とても―――――可愛くて、ひたすら愛しい。」
端正な顔が私を見上げて、甘い言葉を囁く。
どうしても頬が熱を持ってしまって、少しだけふい、と顔を反らして呟いた。
「………その可愛いは、どうせ子供っぽいとかそういう……。」
エルヴィンはふふ、と笑いながら身体を起こして、なにやらすたすたと歩を進めて近くの花畑で白い花を摘んでいる。エルヴィンと花の組み合わせは、豪華な花束とエルヴィンならとても似合うし違和感もないけれど――――、野に咲く小さな花々とエルヴィンの組み合わせがどうにも新鮮で面白い。
そう思ってまじまじとその行動を見つめていると、エルヴィンがこちらに戻って来た。
「ふふ、どうするの?そのお花。綺麗。」
「――――君を飾る。」
「飾る?」
そう言うとエルヴィンは私の目の前に膝をついて、私の耳にかかる髪に白い花を挿した。