第149章 縁
兵団会議の中でエルヴィンは上に現状とウォール・マリア奪還計画の決行時期についての報告をした。
場内はどよめき、人類の勝利を頭に描いた奴も多いはずだ。
――――お気楽なことだ。
行って穴を塞いで帰るだけ、とでも思ってやがるんだろう。
実際のところ相手の戦力も未知数だ。
何が起こるか分からない。
圧倒的に奴らが有利なことに変わりはない。
そんなことに構いもせず、『しくじるな』だの『資金投資が』だのクソみてぇなことをほざきやがる。
――――誰がしくじるつもりで命を張る?
――――エルヴィンの指揮のもと、死力を尽くすだけだ。
おおよその作戦決行候補日まで絞ったところで今回の会議を終えた。エルヴィンが部屋を出る際、兵団トップのたぬきじじぃがエルヴィンに向かって一言を呈した。
「――――君ももう報われて良いはずだ。シガンシナの地下に君が望む宝が眠っていることを祈っているよ。」
「――――………。」
エルヴィンは何も答えず、目線を落としたまま部屋を出た。
このたぬきじじぃもお見通しか。
エルヴィンの本心を。
“人類のため”なんて大義には程遠い―――――、愛する一人の女と見る夢のために革命まで起こして世界をひっくり返した。
むしろこいつは―――――ナナかその他人類どちらかの命を天秤にかけたなら、悪魔と呼ばれようとも迷わずナナの命をとるに違いない。
そう思わせるくらいの―――――イカれ具合だ。
一度会議を解散して、別室に集うのは――――たぬきじじぃ……ザックレーと、ピクシス。それにエルヴィンとハンジ、ナナだ。
例のロッド・レイスが所持していた巨人化させるための薬の今後の使い道を決めるための会合だ。